病院情報システムにおける画像情報の連携と活用
伊藤 豊1)
北海道大学病院医療情報企画部1)
Make use of image data on filmless PACS for conference and research
ITOH Yutaka1)
Div.of Medical Informatics and Plannning, Hokkaido Univ. Hospital1)
Since May 2008, at Hokkaido Univ. Hospital, we started to use filmless PACS. We already reported some functions about Intra oral radiographic examination. In this time, we will report about other additional function of it, about conference and research support. And for analysis of cephalometric radiograph under the filmless situation at orthodontics fields, we developed some relational systems between PACS and consumer application of the analysis.
Keywords: FilmlessPACS, フィルムレスPACS, conference, カンファランス

1. はじめに
北海道大学病院(以下、「本院」と略)においては、2008年5月よりフィルムレスPACSによる運用を開始している。今回、これまであまり機会のなかったPACS画像を利用したカンファレンス支援機能、匿名化画像出力機能及び歯科矯正画像分析診断連携支援機能についての報告を行う。
2. カンファレンス支援機能
PACS画像を利用した術前カンファレンス等を可能とする機能で、手術時のオフライン参照機能を兼務している。
 予めユーザが用意したフォルダ内に、カンファレンスで用いる複数患者のキー画像を複製すると共に、画面上にアノテーションや説明テキスト等を書き込み保存することが可能である。また、キー画像からオリジナル画像へのリンクアップを行い、その他の画像の参照も可能としている。また、手術予定日を指定・入力することにより、当日手術室内の端末ローカルフォルダ内に自動的にダウンロードされ、有事のオフライン参照をサポートしている。

図1 カンファレンスフォルダー例:


図2 アノテーションツール:
3. 匿名化画像出力機能
ユーザが任意にPACS上で指定した画像データを匿名化し、PNGファイルとして端末からデジタルデータで出力する機能である。
 本機能は、予めユーザが中間サーバ上に用意したフォルダ内に出力する複数患者の画像データを匿名化し保存しておき、最終的にHIS端末からデジタルデータとして出力するものである。中間サーバ上で管理することにより、ユーザは任意の時間に任意の端末等で操作が可能となっている。実際の操作としては、予め出力用のフォルダーを各自で作成(各医師個人毎に作成可能)下上で、PACS上で画像を右クリックし保存していくというシンプルなモノである。適宜W/Lの調節を行った場合でも、その状態を維持したままでの保存も可能である。また、CT等連続した画像の場合、Windowsの基本機能であるShiftキーをCtrlキーを用いた連続選択・任意選択操作も可能となっている。なお、本フォルダについては、教育や説明用に保持する長期保存用と出力向けの一時用の二種類とし、一時保存用に関しては、自己管理が原則であるが、容量の関係から管理者が一定のルールのもと削除等を行う運用を行っている。

図3 ティーチングフォルダー例:

 出力に関しては、本来は全てのHIS端末で対応可能であるが、ウイルス等への対応を考慮し、現時点で歯科診療センタにおいては、医療情報企画部内の端末のみを出力端末として運用中である。なおこの場合においても、HIS端末には医療情報部の専用USBフラッシュメモリを用いることとし、ユーザ持参のフラッシュメモリ等へは別途専用PCを経由しかつ検疫の上、出力を行うこととしている。
4. 歯科矯正画像分析連携機能
院内におけるフルフィルムレス運用開始に伴い、従来フィルムを用いて行っていた歯科矯正におけるセファロ分析についても電子化が必要となった。本機能は、市販歯科矯正向分析AP、への患者情報の引き継ぎ及び画像の受け渡しならびに診断結果のPACSへのアップロードを半自動的に行うものである。
 すなわち、病院情報システムの端末上で、PACSに格納されているセファロ画像を指定し、画像情報(撮影日時)及び患者情報(ID、氏名、性別、年齢)を付加した形のファイルとして中間共有サーバ上に一旦書き出した上で、同一端末上で市販分析ソフトを起動し、先ほどのファイルを取り込むことにより、シームレスな情報の引き継ぎを可能としている。分析終了後は、市販分析ソフト側から分析表を送信することにより、自動的に患者毎にその分析結果を画像としてPACSサーバに格納することとした。
 この結果、撮影日時やIDなどを全く手入力することなく分析表に取り込むことが可能となり、個人情報の保護や患者の取り違えなどのアクシデントを未然に防ぐことが可能となった。また、分析表をローカルディスク上で保存するのではなく最終的にPACSで管理することより、セファロ分析表を電子保存すると共に、院内の病院情報システム全端末から参照することが可能となった。
図4 システム構成概要:


 

参考文献
[1]伊藤 豊.:北大病院におけるフィルムレス環境~ 歯科口腔領域への展開とDICOMとの関わり ~. 歯科放射線学会ニュースレター, 12: 2-3, 2010.
[2]伊藤 豊、内藤 智浩.:北大病院歯科診療センタにおける歯科領域フィルムレス環境の構築 . GE today , 30: 33-34, 2009 .