歯科用放射線画像ビューワと標準化について
玉川 裕夫1) 山本 勇一郎2) 坂本 博3) 瀧川 智義4)
大阪大学歯学部附属病院1)
大阪大学医学研究科2)
東北大学病院3)
日本大学歯学部4)
Radiographic image viewer and standardization in dentistry
Tamagawa Hiroo1) Yamamoto Yuichiro2) Sakamoto Hiroshi3) Takigawa Tomoyoshi4)
Osaka University Dental Hospital1)
Osaka University Graduate School for Medicine2)
Tohoku University Hospital3)
Nihon University Faculty of Dentistry4)
In tandem with the penetration of electronic medical records, smooth operation of patient record viewers and clinical test results, including radiographic images, have been highlighted. In this session, we are going to discuss about unnoticed points of standardization for dental radiographic images and we hope that academic societies associate with these images will have new trigger points to collaborate with each other.Since radiographic images already have DICOM standards and DICOM spread around the world CT, MRI or other large size images do not have any problem in an electronic viewer. However, DICOM standard does not arrange details of dental films so that parameters for dental image viewer vary from a vender to a vender.For safety reasons, information of position of the teeth is very important in dentistry. In dental clinics, after developing process, dental radiographic films have been mounted on some kinds of layout sheet called ten-films sheet or fourteen films sheet and so forth. With these sheets, dentists easily and without fault make co-relation between the tooth in the film and its real position of the patient. In addition, chances for exchanging dental images will increase intra medical institutions.The goal of this session is to clarify the needs for a dental radiographic viewer and to define the scope of the parameters for this viewer.
Keywords: Radiographic Image, 放射線画像, Dentistry, 歯科医療, Standardization, 標準化

1. はじめに
玉川裕夫
大阪大学歯学部附属病院 

診療禄の電子化が普及するにしたがい、放射線画像を含めた各種検査結果と電子診療禄を、如何に円滑に結びつけるかがクローズアップされている。本セッションは、歯科用放射線画像の標準化で見過ごされてきたポイントを検討し、その結果として、関係諸学会が相互に連携し、規格作りを始めることを目的として開催する。
これまで診療現場では、現像済み歯科用レントゲンフィルムが10枚法、14枚法と呼ばれる定型レイアウトのシートに並べられて使われてきた。電子化に際し、放射線画像そのものや撮影情報などの属性情報には、DICOM規格があるため問題は少ないが、歯科用画像ビューアでどの位置に、どの部位の画像を表示するかを決めるパラメータには取り決めがなく、ベンダごとの差を吸収する仕組みを実装しなければならない。画像参照時には、安全上の理由から口腔の同じ部位の画像がビューアの同じ位置に表示されていることが必要で、医療機関間の連携を考えても、このような位置情報の標準化が今後求められるに違いない。
そこで本セッションでは、まず日本大学の瀧川先生に電子診療禄と歯科用画像ビューアの関係について、ユーザの立場から必要な機能や操作性をコメントしていただく。次に、大阪大学の山本先生に、実装時の諸問題とその対策について具体案を提示していただく。そして、東北大学の坂本先生には、JJ1017との関連について詳しくお話ししていただく。
歯科用撮影装置をあつかうベンダの参加も求め、何をどこまで標準化するかについて議論を深められるよう、ディスカッションのための時間を多くとることを予定している。
2. 歯科用放射線画像に求められるもの
瀧川智義
日本大学歯学部保存学教室修復学講座 

歯科用フィルムを用いて撮影された放射線画像は、歯科臨床での利用頻度が高いだけでなく、診断に必要な詳細情報を含んでいる。したがって、フィルムベースで診療を行うには、フィルムに写っている歯の部位と患者の身体部位との関係を、直感的に混乱なく捉えられることが必要で、そのため歯科用フィルムをマウントできる専用シートが用いられている。
マウント方法には10枚法、14枚法など種々のバリエーションがあり、硬組織の状態を一口腔単位で概観することと、歯科用フィルムが保持している詳細情報を丹念に把握することが効率よくできるよう、診療現場の工夫が盛り込まれているのである。
一方、電子診療録の普及に伴い、電子診療録から歯科用放射線画像を参照したいという要望が増え、ベンダー各社はフィルムマウントシートを摸したビューアを実装することで対応している。
しかしながら、歯科用画像ビューアでの各種処理に必要な情報は、各社仕様で決められることが多く、このままでは歯科用放射線画像を、医療機関同士で交換するために、何らかの情報変換操作がその都度必要になってしまう。
すなわち、歯科用画像を効率よく共有するためには、標準化の観点からこの問題を整理する必要があるのではなかろうか。また、医療画像にはDICOMという国際標準があるので、その枠組みのなかで歯科の画像を効率よくやりとりできる方法があるのではないだろうか。
我々は臨床医として、一度撮影したX線画像を簡単な操作で呼び出せ、上下左右を間違うことなく使えることに加えて、電子的な診療情報提供の場合でも、面倒な操作なしにやりとりしたいのである。
さいわい、この領域で最近引っ張りだこのお二人に来て戴けるので、お二人のお話をもとに解決すべき問題と次に進むべき方向を明確にできるワークショップになると確信している。

3. 歯科放射線画像表示のためのレイアウトシートおよび位置情報の実装について ~歯科領域DICOM標準に対する拡張提案の取り組み~
山本勇一郎
大阪大学医学研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学医療情報学 

デジタル化された口内法撮影の現場では、画像に対して効率よく歯式部位情報を付与するため、Mappingと呼ばれる操作が実施されている。この操作で使用されるMappingテンプレートは、画像表示時に用いられる表示レイアウトシートと密接な関係がある。
本ワークショップでは、テンプレートコードと位置情報の標準化案を示し、そのうえでMappingテンプレートから定義できるいくつかの表示レイアウトパターンを提案する。また、臨床的観点から必要となる画像表示機能に関する要件についてもいくつかの先行施設の実装事例をもとに紹介する。
これらの標準化がすすむことで、より上流からの標準化されたオーダ情報の取得によって、依頼内容に対応した表示レイアウトシートとの紐づけも可能となる。
歯科用CRシステムやPACSベンダの実装仕様に依存しない、歯科DICOM画像への歯式情報と表示のためのキー情報の格納は、歯科画像の施設内での有効活用のみならず、施設間の情報共有にも大きな役割を果たすと考えられる。そのためのDICOM標準の拡張提案も歯科放射線学会DICOM委員会を中心に、その準備が進められている。
画像発生から保管、表示までのトータル・インテグレーションを実現するために必要な「標準化要件」についての議論が実施できれば幸いである。

4. 歯科部門におけるJJ1017コード施設拡張の試み
坂本博
東北大学病院診療技術部放射線部門メディカルITセンター 

東北大学病院では、2009年のRISのリプレイスに伴いJJ1017コードを採用した。JJ1017コードとは、オーダ情報、会計情報、照射録情報の連携を目的とし、モダリティ,手技,部位,左右,方向,体位,指示等を複合的に構造化した放射線情報システムの標準的なマスタコードである。DICOMタグを利用するための指針と臨床現場で使えるコード体系を目指し、マルチベンダによるシステム構築の相互運用性確保のためにIHE-Jからも推奨されている。
しかし、JJ1017では口内撮影領域について未対応項目が多く不十分な状況であった。そこでJJ1017の基本的な目的に加え、一般的なPACSでもViewerハンギングプロトコールや既存のDICOMタグ情報からPACSViewerで口腔内の画像を表示する目的でJJ1017コードの施設拡張を行ったので報告する。
コード化にあたっては、既に歯式の分類化が行われているISO3950-1984を参考に進めたが、過去オーダとの整合性、撮影法、参照方法の標準化など様々な面で課題が生じた。歯科領域のJJ1017コードの必要性などの議論の一助となれば幸いである。