歯学部附属病院の物流システム最適化で得られた歯科材料マスタのメタ情報について
林 直治1) 玉川 裕夫1) 多賀 義晃1) 坂田 克行1) 矢谷 博文1) 小西 義朗2)
大阪大学歯学部附属病院医療情報室1)
(株)NECシステムテクノロジー2)
Meta information about the dental material master leading to optimization of intra-hospital logistics system
Hayashi Naoji1) Tamagawa Hiroo1) Taga Yoshiaki1) Sakata Katsuyuki1) Yatani Hirofumi1) Konishi Yoshiaki2)
Osaka University Dental Hospital1)
NEC System Technologies, Ltd.2)
Introduction of intra-hospital logistics system is required for inventory management of dental materials because of their many variations. In addition, coutinuous master maintenance and inputted data watching are also needed. In order to achieve them, we've restructured the master and got meta information about them. In this report, we summarize them leading to optimization of our system.
Keywords: logistics system, 物流システム, dental material master, 歯科材料マスタ, standardization, 標準化, meta information, メタ情報

1. はじめに
 大阪大学歯学部附属病院では、2000年に薬剤を対象とした請求システムを導入し、続く2005年のシステム更新時に、材料の請求・発注・在庫管理が可能な物流システムとして、NECの「MegaOak-M3」1)を導入した。これにより、院内の歯科材料は適正に管理される予定であったが、実際は2006年度第4四半期においても、在庫数および在庫金額の完全な把握ができておらず、各科から材料係への請求機能および材料係から各納入業者への発注機能のみの稼動にとどまっていた。つまり「何が何処に何個あるか」が管理できていない状況であり、監査法人からは「棚卸が通法どおり実施されていないこと」と併せて「棚卸資産の過少計上」の指摘を受けた。
 そこで、2007年度第4四半期における歯科材料の適正在庫管理の実施を目標として2006年9月にプロジェクトチームを立ち上げた。具体的には上記システムの完全稼動により理論値と現場実数値との突合せを図ることであり、そのために現状に至った様々な問題点を、システムとしての制度面はもちろん現場レベルでの運用面に至るまで可及的に洗い出した。その結果、最初のつまづきが歯科材料マスタの整備不十分にあると判断し、これを再構築することとした。
 そこで本稿では、当院での2005年のシステム更新時(旧マスタ)と今回(新マスタ)の2度にわたる歯科物流マスタ作成の経験2)から得られた歯科材料物流マスタにおけるメタ情報について考察する。
2. 旧マスタ
 本院で使用していた最初のマスタ(旧マスタ)は、院内の棚卸リスト3)を元にしている。具体的には、2005年度第4四半期の棚卸において、各科に存在するすべての物品のリストを作成し、これを全科的に集約した上で重複項目の洗い出し・一本化、欠落規格品の追加、同系統材料の表記方法の統一などを繰り返し行い作成した。その結果当初約18000件あった品目数は2006年10月現在で11498件まで減少した。しかしながら、「1物品を異なった名称で挙げているバリエーションが多岐にわたること」「規格の記載順序が決められていなかったために同一化が難しいこと」「規格は異なるが本院への納入価格が同じ物品が1品目にとりまとめられてしまっていること」などによりマスタの1項目と実際の物品とが完全な「1対1」の関係になっておらず、その結果として「物品の選別特定ができない」「数量のカウントができない」「在庫数を同一の単位で入力できない」という現場のクレームや、監査法人からの指摘に至っていると考えられた。
3. 新マスタ
 つまり、このまま旧マスタの整備を続けて「使えるマスタ」の状態にするのは困難であり、新マスタを作り直したほうが得策と判断した。具体的には、旧マスタの問題点を再現させない為に、過去2年に本院に対して納入実績のある業者から取扱品目数の多い7業者に対して本院が作成した書式(表1)を提示し、各業者が作成・保持している納入物品リストを可及的にこれに沿うようにコンバートした物を回収し、これらを統合した物を新マスタのスタート地点とした。
 7業者のリストを統合した直後の品目数は5217件で、このうち重複していると認められた項目は20品目に満たなかった(0.38%)ので、旧マスタの問題点はクリアできたと判断した。その後のブラッシュアップにより総項目数は6994件(2007年9月3日現在)までに増えたが、それでも旧マスタの60.8%にとどまっている。
4. 歯科物流マスタの具備条件
 色違い・容量違い・大きさ違いなど規格違いの商品が非常に多く存在するという歯科材料の特性や、コメディカルスタッフ以外の者や若手スタッフなど商品知識に乏しい者が利用する機会を考えた時、材料の検索や同定がいかに簡単に間違いなくできるかが物流システムとしては重要であると考えられる。また生産・販売・納入と取扱企業の変わる機会が多いことや、本院で使用している「MegaOak-M3」では各項目に文字数制限が存在するが検索用キーワードには個数制限が存在しない事も併せると、JANやEANはもとより各業者内でのみ通用するハウスコードや海外流通コードなど、カタログや包装に明記される可能性のあるものは、検索の際のキーワードにそのまま使用でき利用価値が高いと考えられた。そこで新マスタ作成に際しては表1に示す各項目を含む書式を各業者に提示したが、回収されたリストには品名・規格・納入価格・会社名称など基本的な項目しか満たされていないものがほとんどであった。また、満たされていた項目についても、簡単な一般名称のみの物から商品区別に十分たる規格を含むものまでその粒度は様々であった。
 その他梱包内訳や稼動上必要な最少納入単位や使用入力単位については暫定的に1函単位とし、後のメンテナンスでブラッシュアップすることとした。
 各項目内での表記方法には様々の“ゆらぎ”が存在した(表2)。マスタ全体として統一が図られているのが最良であるが、少なくとも同系統材料について統一されている事が商品の検索同定には必要である。
 現行の医療機器DBマスタ では歯科に関するものは10719件4)あるが材料は含まれていないものが多く、今後は製造業者・取扱業者・納入業者等の歯科材料産業界やシステムベンダを含めたルール作りまで広がりを持つことが望まれる。
参考文献
[1]物流管理システム「MegaOak-M3」.:「https://www8.medis.or.jp/member_product_detail.asp?product_id=172.」
[2]林直治他.:歯学部附属病院の物流マスター再考―マスター再構築にベンダー横断型標準フォームを利用した効果―. 平成18年度大学病院情報マネジメント部門連絡会議.
[3]玉川裕夫他.:歯科の物流システムと標準化-何を解決できるか-. 第24回医療情報学連合大会論文集、2004年、45頁~46頁.
[4]医療機器DBシステム.:「https://www.kikidb.jp.」

表1 本院で策定したフォーマット:
表2 表記のゆらぎ: