歯科用電算レセプトについての提案
森本 徳明1)
矯正歯科 森本1)
One Proposal of Computer-processing Rezept System in Dentistry
Noriaki Morimoto1)
Morimoto Orthodontic Office1)
Abstract: There are various opinions about a purpose and main effect of computer-processing Rezept System. They are summarized as follows:
1. Construction of a mechanism, a social database, collecting data about medical care in the whole nation,
2. Promotion of efficiency in a work about medical institutions / inspection agencies / insurers,
3. A check for an insurance claim to be done appropriately,
4. Promotion of standardization in a medical institution and effective practical use of standardized data,
5. Intermediation to system standardization such as an electronic chart in the future.
In this presentation, I will pick up problems of dental Rezept installed on a medical computer-processing Rezept System. Next, I will probe into a solution for it. The problems that I mentioned this time are handling of the dental formula and linkage between disease information and summary information. About the handling of a dental formula, the Zsigmondy method is widely used in Japan, and this method seems to be desirable as for the expression. However, it is thought that the Zsigmondy method has disadvantage in communication of information because order of numbers and signs has meaning in this method. Therefore I suggest a method to express the information using four-digit code that has two columns of tooth-code like FDI code and another two columns of status-code. Because this method is the same form as a modifier code in a medical field, it seems easy to be accepted. About the linkage between disease information and summary information, I will suggest a method to arrange disease-related-code newly.
Keywords: Dental, Computer-processing Rezept, Medical Insurance

1. はじめに
 レセプト電算システムの目的及び主な効果についてはいろいろと意見があるが、JAHIS医事コンピュータ部会がIT化の時代を踏まえ、HIPPAを意識して次のように纏めている。 1)
  1. 日本全体の医療保険システムをより良い方向にコントロールするために、医療に関するデータを国全体で収集する仕組み(社会的データベース)の構築。
  2. 医療機関・審査機関・保険者における業務の効率化(社会的ムダの排除)
  3. 保険請求が適正に行われるためのチェック
  4. 医療機関における標準化推進と標準化されたデータの有効活用
  5. 電子カルテ等の将来システム標準化への橋渡し(インターフェース)
 課題研究会 2) としても、同様のことを踏まえたうえで標準化について考えているが、本発表では、現在医科で稼動しているレセプト電算システムをもとに、問題点を洗い出し、歯科で使えるレセプト電算システムの提案を行う。
2. 医科のレセプト電算システムの概要
 医科のレセプト電算システム3)では、基本マスタ、診療行為マスタ、傷病名マスタ、修飾語マスタ、医薬品マスタ、特定器材マスタ、コメントマスタを基本マスタとして、MT、FD、MOの磁気媒体に固定長もしくはCSV形式の指定されたファイル形式で提出することとなっている。そのファイル構成は大まかに言うと、レセプト共通レコード(レセプトの先頭を示す)、レセプト情報(保険者レコード、老人レコード、公費レコード)、傷病名情報、摘要情報(診療行為レコード、医薬品レコード、特定器材レコード、コメントレコード)を一塊とし、それを1レセプト情報とし、複数のこのレセプト情報の頭に医療機関情報を、末尾に合計書情報をつけて、医療機関単位のレセプトを構成している。
 摘要情報には診療識別コードをつけて、一連の行為または同一「点数」・「回数」をまとめている。加算項目、通則加算項目は基本項目に続けて記録することとしている。
 制限事項として、外字の取り扱いがあり、JISX0201の8単位符号およびJISX0208の範囲で記録することが決められており、1)氏名等で上記以外の漢字を含む場合は1バイトもしくは2バイトのカナ名称で記載、2)丸付き文字は括弧囲みに、3)特定保険医療材料、傷病名等でのローマ数字は算用数字に、4)患者氏名以外の半角英数字、半角カナ文字は全角文字というルールを定めている。
3. 歯科で利用する場合の問題点
 医科と歯科では元は同じ制度のうえに作られたものであり、歯科の傷病名マスタ等 4) がほぼ整い始めたが、それでも診療内容や記載方法、審査の違いにより、細かな点では、現状のレセプト電算処理システムでは利用が困難、できない、もしくは特別の方法が必要と思われる。
 まず、基本的な問題は、歯科で用いている部位表現である歯式の取り扱いで、現在のレセプトでは外字等を使って表現されているものがある。(JISX0213では表現可能) 5)6)
また、歯式は数字の並び順にも意味がある。
 先に述べたとおり、現状は外字の扱いには制限があることと、外字ではないがJISX0213の利用が認められていない。
 傷病名情報には、傷病名マスタ・修飾語マスタよりコードが入れられる。医科との整合性を考えれば、部位である歯式情報は修飾語コードとして扱われるが、歯の状態情報を含む場合もあり、またそれが複数であることも多く、審査の時の重要な要素となりうるので、あらたな方式を考える必要があると思われる。また、摘要情報の診療行為レコード、コメントレコードにおいても部位の表現が必要な場合があるが、現状ではテキストエリアで、修飾語コードを使う仕様になっていないため、このあたりの考慮が必要と思われる。
 次に、歯科の保険審査は非常に細かなチェックがなされており、病名情報と摘要情報の関連付けを、最低限行わないとレセプトを電算化しても、自動チェック機能を入れることができず、省力化・コスト削減にはつながらないため、電算化の意味が少ないと考えられる。また、処置内容には一定期間の算定ができない、もしくは減額というものがあり、処置もしくは病名に日付情報をもたなければ、チェックができないものもある。
4. 現状を踏まえた新しい提案
 紙ベースでスタートしたレセプト請求方式が、やがて電子化されることにより、伝送や集計の手間が問題にならなくなると、電子カルテに記載された内容が日々の診療単位で処理され、レセプトという概念がなくなり、われわれの課題研究会で発表してきたDinfoex(XML Schema) 7)8)9) などにより、診療論理を記録・類推できる診療情報が交換するようになるかもしれない。
 しかし、現状においては、早急に政策として電算化を迫られており、医科で稼動しているレセプト電算方式に、歯科の請求・審査システムをあわせる方法が求められている。
 そこでこの前提をふまえ、前章の問題点についての解決方法を考える。
 歯式の取り扱いに関しては、日本の歯科医師にとってはZsigmondy方式が見慣れており、表示に関してはこの形式をとることが望ましいと思われる。しかし、情報の伝達においては、数字や記号の並び順によって意味をもつ同方式はデータの一意性を保つためにも不利と考えられるので、FDIコードを参考にし、それぞれの歯に2桁のコードを振り、次に歯の状態を示すコードを2桁付加し、Zsigmondy方式で持っている情報をもれなく4桁の一コードで示す方法を提案する。これならば、医科で部位を含む修飾語コードと同一の形式であり、現状との親和性もあると思われる。しかし、レセプト電算の傷病名情報には修飾語エリアは当初2コードしかなく、複数の歯に関わる傷病名の場合、部位情報を最大32本の歯の情報を並べることができないので、部位情報以外の修飾語コードも考え4バイト×(32+α) =150バイトくらいはエリアを準備しておく必要があると考える。
 傷病名と摘要情報の関連付けについては、次のように提案する。傷病名情報は複数持つことができ、傷病名レコード、修飾語レコード2つを基本に持っている。摘要情報は先に述べたとおり、レコード識別と診療識別コードを持っている。単純に考えれば、診療識別と同様な傷病名関連コードをつけることにより、何番目の傷病名情報と関連付ける方法がある。ただし、基本料や指導料は1対1の関係にならないので特殊のコード(たとえば、00もしくは99)を振り分ける必要があろう。ただし、傷病名が同一で複数の歯が修飾語でつながっている場合、歯ごとに処置内容が違う可能性があり、関連付けがあいまいになるため、傷病名を起こりうる処置単位ごとに分けるか、修飾語との関連付けもできるように傷病名関連コードの下位に修飾語関連レコードを設ける等を考える必要がある。どちらの場合にも短所はあるが、現在の枠の中で傷病名と摘要情報を最低限ではあるが関連付けることができる。
 今後、医科での問題点も調査し、よりよい形で歯科のレセプト電算システムが稼動されるように提案を行っていきたい。
参考文献
[1]医療保険における診療報酬の審査支払業務のシステム化についての具体的対応策(2),財団法人医療保険業務研究協会,2001
[2]http://www.dhis.info/
[3]レセプト電算処理システム導入マニュアル[医科編],保健医療福祉情報システム工業会医事コンピュータ部会電子レセプト委員会,2001
[4]http://www.medis.or.jp/4_hyojyun/sika/index.html
[5]http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=9005
[6]http://www.unicode.org/unicode/reports/tr28/
[7]歯科情報のオブジェクトモデリング,佐々木好幸,http://www.jcmi2002.med.kyushu-u.ac.jp/jcmi-kakunin/JCMI22/1-K-2-3/paper.html,2002
[8]「歯科所見のontology的なモデル分析に基づくXML Schemaの構築」,廣瀬康行,医療情報学,23(1),33-43,2003
[9]オントロジー的なメタモデル:廣瀬康行, 2003 , http://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/medi/csx/ontology/0.90/