歯科の物流システムと標準化
−何を解決できるか−
玉川 裕夫1)
大阪大学 歯学部附属病院 口腔総合診療部・医療情報室1)
Logistics in Dental Hospital and Standardization
- What is solvable? -
Hiroo Tamagawa1)
Division for Interdisciplinary Dentistry, Osaka University Dental Hospital1)
Abstract: In order to solve logistics in dental hospital, a highly computed system with bar-codes and bar-code readers is going to be installed in our hospital. Major medical products have its own product identifier code on the package with bar-code system such as JAN, Code39 and EAN128. However, products for dental clinic are often very small and do not have enough space to print such codes even though they are very expensive. In our hospital, more than 12,000 items are stored in every clinics and some become expired before open their cap. We are constructing an in-house bar-code system based on the EAN128.
Keywords: logistics, dental hospital, bar-code, EAN128

1. はじめに
 本院では、経営効率の向上のため医療材料の調査を行い、3ヶ月に一度棚卸しを行っている。また、バーコードを利用した物流システムを導入し、各部署ごとに医療材料の請求、発注、納品、消費について管理する予定である。しかしながら、本院で扱う全ての物品にバーコードが割り振られているわけではなく、歯科特有の小さな物品には直接バーコードを割り振ることができないケースも多い。本ワークショップでは、歯科の物流システムがもつ問題点を整理し、ともに対策を検討する。
2. 歯科の物流システム
2.1 管理対象の把握
 本院であつかう医療材料をデータベース化し、単価と在庫数があきらかな物品に対して在庫額を算出した。その結果、本院で扱っている医療材料は11725品目で、ダイアモンドポイントなどは約150品目もあることが明らかとなった。また、本院の在庫総額の60%を約330品目、80%を780品目、そして90%を1244品目がそれぞれ占めていた。物流システム稼動前に、管理品目を減らすことをまず行っている。
2.2 物流システムの運用
 現在の物品管理は、各診療科が請求依頼を材料掛に出すことからはじまる。納品は一部の物品をのぞいて各診療科で直接行われ、検品も現場で行われているが、物流システム導入後は、納品と検品の場所を分けた運用を行う予定である。
 物品には、院内バーコード(EAN128形式)を印刷したシールを添付することにしたが、歯科材料はCode39で統一される動きもあり、長期的な展望を立てにくかった。
2.3 物流システムとPDA
 当初、物流システムでは入力装置として携帯端末(PDA)を利用する予定であった。PDAは看護システムでも使うし、持ち運ぶことができるのでハンディタイプのバーコードリーダより使い勝手がよいだろうと考えたからである。しかしながら、入札予定のPDAが持つ無線LAN機能(IEEE802.11b)で使用可能な暗号化技術であるWEP(Wired Equivalent Privacy)は一昔前の規格であるし、WPA(WiFi Protected Access)ですら暗号解析ツールがすでにでまわっている。物流システムのサーバとクライアント間のみで通信が行われるのであればそれほど神経質になる必要はないが、物流システム自体が病院情報システムの一部であることを考えると、システムの穴をふさぐため、物流システムでのPDA利用を断念した。
3. 医療材料の標準化
 医療材料の標準化には、酒井らの膨大な労力がさかれた結果 1) 、MEDIS-DCから標準マスターをダウンロードすることが可能となった 2) 。同時に、平成11年9月に「医療材料 商品コード・バーコード標準化ガイドライン」が発刊され、関係材料メーカー、販売会社様には迅速な対応が求められている。
 歯科で用いられる医療材料は、小さくて単体ではバーコードシールを貼ることができないものが多い。中には単価が高いものもあり、本院では、それらをビニール袋にいれて、その上からバーコードシールを貼って管理することにした。また、全ての物品にバーコードシールを貼るのではなく、各物品毎に最小管理単位を定めて、管理する予定である。原稿執筆時点では、実運用が始まっていないので、現場での負担と得られる効果との関係については、残念ながら明らかにできていない。
 歯科の医療材料も医科と同様EAN128をコード体系として採用することが望まれる。それによって、歯科と医科の両方で使う物品についてコード対応表を作成したり、あるいはそれをアップデートするなどの労力を減少させることができ、より効率の良い物流システムとして運用できると考えられる。
参考文献
[1]https://www.izaidb.jp/SiteMap.asp
[2]http://www.medis.or.jp/4_hyojyun/download/main2.html