最新の医療情報標準化マスターを利用した歯科医療情報の交換手段の実装
成澤 英明1)
昭和大学 歯学部 う蝕歯内療法学講座1)
Implement study of clinical Dental record exchange method with latest standard master codes
Hidaki Narusawa1)
Department of Conservative Dentistry, Showa University1)
Abstract: This work reports a trial to make experimental environment for dental data exchange based on Dindoex XML format and Medis Japanese domestic Dental codes.
We choosed TAMINO for server softwawe due to its native XML feature.
Experimental Dental clinical software is Karte Maker under full cooperation of Dr.YAJIMA.
This work indicates necessity of big improvement at both MEDIS codes and Dinfoex XML format.
Keywords: XML, dental, standardization

1. はじめに
 人類の歴史の中で,文字の発明は極めて大きな意義があった.それにより出来事を記録することができる.考えを残し,伝えることができる.しかし,文字の読み書き能力は極めて一部の階層に限られていた.広く普及するのは活字の発明まで待たなくてはならなかった.
 書物にしても,製作および流通にコストがかかっていた.近年の電子メディアの発達により,こういったコストも極めて低廉となった.活字が人類の進歩に大きく貢献したように,電子メディアもさらなる飛躍的な進歩に貢献しえると考えられる.
 印刷物というメディアが広く普及するためには流通網の整備が必要であり,実際には数百年の時間が必要であった.
 電子メディアの普及のためにも,同じようにハードウェア技術,法律や回線などのインフラ,プロトコールの整備が必要である.すでに一般社会には普及しているように見受けられるが,社会の基盤となるには至っていない.
 そのためには個人情報や金銭のやりとりを不安なくできるような整備が必要であろう.
 一方で医療に関しても有益と考えられる.ハードウェア技術やインフラに関してはすでに十分なレベルに達している.法整備やセキュリティ対策は現在急ピッチで行われている.最後のプロトコール整備に関しては処置や病名のコード化および通信プロトコールが必要であるが,前者に関してはICD,厚生省マスターがあり,後者についてはMML,HL7など複数の試みがある.
2. 歯科分野の取り組み
 国際的には歯科は,医科に大幅に遅れていたが,平成14年廣瀬らが,歯科情報の記述に向くxmlによる情報交換モデル 1) を発表した.
 標準歯科マスター 2) もMedisよりβ版が発表されて,実装要件が整ってきつつある.
 
しかしながら現実的には,未だに実装例はない.実用レベルに達している確信も持てない.開発を早めるにせよ,実用性をアピールするにせよ実装実験を行うことは有意義であろうと思われる.
3. 実験システムの概要
 サーバーのデータベースシステムとして通常のSQLも使用可能と考えられたが,近年XMLを使用するデータベースが出現しており,技術的に興味深いところである.年々高速化し大容量化しているコンピュータテクノロジーは,ついにXML nativeのままのデータベース化にまで到達した.計算上は十分実用的に動作すると考えられるが,実験してみることにした.幸い,BeaconIT社の協力が得られたため最も進歩的なXML Native Database製品 Taminoをお借りすることができた.
 クライアントとしては歯科医師兼プログラマーの矢嶋研一氏の協力の元,カルテメーカーV3 3) を用いた.
 MEDISの歯科マスターはβ版のため,病名や処置にまだコードが付与されていない.このため暫定コードを付与した後に,カルテメーカーのマスターとの変換テーブルを作成した.
 カルテメーカーV3にはDINFOEXのXMLコード変換機能がもともと実装されていたため,これで準備が整った.
Fig1に概要を示す.市販の歯科用電子カルテであるカルテメーカーV3からAPIを経由してXMLデータベースTaminoと送受信を行う.


Fig2にサーバーとクライアントのやりとりを示す.双方のデータベースは非同期であり,レコードは本実装では1日単位で管理することにした.


4. 考察
 歯科用のクライアントアプリケーションはすでに十分成熟し洗練されたものになっている.データベースアプリケーション,通信環境もすでに実用レベルを超えていることに関しては確信が持てる.いつでもASP形式でセンターにバックアップをとったり,地域レベルでの統計や一括請求が可能な情勢にある.しかしながら,それを接続するプロトコール整備が不完全であることは改めに痛感した.
DINFOEXプロトコール開発,MEDIS標準コードには多大な労力と時間が注ぎ込まれたがまだ十分とは言えない.本研究が今後の発展の一助になることを期待してやまない.
参考文献
[1]オントロジー的なメタモデル:廣瀬康行, 2003 nov,http://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/medi/csx/ontology/0.90/
[2]歯科分野マスター: MEDIS:2004 June: http://www.medis.or.jp/4_hyojyun/sika/index.html
[3]カルテメーカーV3: 矢嶋研一:2004,http://www5.big.or.jp/~karte-m/