歯科医療情報標準化の基盤となるICD-DA対応歯科標準病名マスターの編纂を行っているので,その概要を報告する。
歯科標準病名マスター検討のため,日常頻用されている歯科臨床病名のICD-DAによるコード化や既存歯科病名マスターの比較検討などを行ってきた。歯科臨床病名に対してICD-DAによるコード化を試行したところ,約30%の歯科臨床病名では複数候補が考えられたり,ICD-DAに明示のない状態表現などのため,記載された表記のままでのコード化は困難であった。 また,歯科医院で使用されている歯科レセコンの病名マスターと病院歯科で使用されている病名マスターの比較では,歯科レセコンでの病名数は病院歯科での病名数の約1/3にとどまっていた。ICD分類としての病名の分布は,いずれの病名マスターにおいても歯科領域の病名が含まれる11章.消化器系の疾患(K)が最も多く,次いで,19章.損傷,中毒およびその他の外因の影響(S,T),2章.新生物(C,D)の順であった。しかし,19章.損傷,中毒およびその他の外因の影響(S,T)に分類される病名が占める割合は,病院歯科の15%に対し歯科レセコンでは46%と大きく異なっており,違いの多くは義歯破損など補綴物の状態表現に関するものであった。
歯科標準病名マスターにおいては,このように,臨床場面でICDの利用がなかったことに起因する課題,義歯の破損,冠の脱落など状態表現が病名と同様に扱われていることに起因する課題などに加え,患者単位だけでなく,個々の歯を単位とし,しかも複数の病名が併記される場合が多いという歯科特有の課題の検討が重要となっている。