ICD-DA対応歯科標準病名マスターとその課題
齊藤孝親1) 中山 均2) 佐々木好幸3) 鈴木一郎4) 玉川裕夫5) 成澤英明6) 萩原芳幸7) 日高理智8) 森本徳明9) 山田卓也10) 西田 悟11)
日本大学松戸歯学部口腔診断学教室・口腔科学研究所1)
元北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座(歯科放射線分野)2)
東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科医療情報部3)
新潟大学歯学部附属病院口腔外科4)
大阪大学歯学部附属病院口腔総合診療部・医療情報室5)
昭和大学歯学部保存修復学教室6)
日本大学歯学部補綴学教室クラウンブリッジ学講座7)
九州歯科大学歯科保存学第二講座8)
矯正歯科 森本9)
日本歯科医師会レセプト電算処理検討委員会10)
保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)医事コンピュータ部会歯科システム委員会11)

 歯科医療情報標準化の基盤となるICD-DA対応歯科標準病名マスターの編纂を行っているので,その概要を報告する。
 歯科標準病名マスター検討のため,日常頻用されている歯科臨床病名のICD-DAによるコード化や既存歯科病名マスターの比較検討などを行ってきた。歯科臨床病名に対してICD-DAによるコード化を試行したところ,約30%の歯科臨床病名では複数候補が考えられたり,ICD-DAに明示のない状態表現などのため,記載された表記のままでのコード化は困難であった。 また,歯科医院で使用されている歯科レセコンの病名マスターと病院歯科で使用されている病名マスターの比較では,歯科レセコンでの病名数は病院歯科での病名数の約1/3にとどまっていた。ICD分類としての病名の分布は,いずれの病名マスターにおいても歯科領域の病名が含まれる11章.消化器系の疾患(K)が最も多く,次いで,19章.損傷,中毒およびその他の外因の影響(S,T),2章.新生物(C,D)の順であった。しかし,19章.損傷,中毒およびその他の外因の影響(S,T)に分類される病名が占める割合は,病院歯科の15%に対し歯科レセコンでは46%と大きく異なっており,違いの多くは義歯破損など補綴物の状態表現に関するものであった。
 歯科標準病名マスターにおいては,このように,臨床場面でICDの利用がなかったことに起因する課題,義歯の破損,冠の脱落など状態表現が病名と同様に扱われていることに起因する課題などに加え,患者単位だけでなく,個々の歯を単位とし,しかも複数の病名が併記される場合が多いという歯科特有の課題の検討が重要となっている。